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『ゼロ・グラビティ』
2014年03月5日(水)
Gravity

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 第86回アカデミー賞で本年度最多の7冠を達成した作品。
 受賞したのは監督賞と作曲賞のほか、撮影賞、視覚効果賞、編集賞、録音賞、音響編集賞。

 これはつまり、ノミネートされた全作品中、本作が最も技術的に群を抜いて優れていた、ということの証明である。

 …ということを知り、ぼくも執筆の合間を縫って慌てて見に行った。
 正直なところ、作品の世界に引き込まれながら、「これ、どうやって撮ったんだろう?」と思った映画は久しぶりだった。

 開巻、広大な宇宙空間に浮かぶ地球が映り、画面の端から底を向けて浮遊しているスペースシャトルが近づいてくる。
 その向こうに見えていた白い点のようなものが、実は宇宙服を着た飛行士で、画面上で大きくなるにつれてジョージ・クルーニーであることがわかってくる。

 そして、そのクルーニーが船外作業をしている本篇のヒロイン、サンドラ・ブロックと接触するまでを、実に13分間のワンカット、ワンシーンで描いている。
 3D映画としては過去最長の長回しではないだろうか。
 
 この導入部で、映画を見ているぼくたちはほぼ完全な「無重力感」の虜になってしまう。

 カメラがブロックの超クローズアップから彼女の視点に切り替わり、ヘルメットのバイザーの内側まで映し出した手法もリアリティと臨場感たっぷり。
 決して大袈裟ではなく、自分も実際に宇宙にいるかのような錯覚を覚えた。

 ストーリーは極めて単純である。
 ブロックやクルーニーがシャトルの修理をしていたところ、破壊されたロシアの人工衛星の破片(スペース・デブリという名の宇宙ゴミ)が飛来してきて機体が大破。

 ふたりは浮遊しながらISS(国際宇宙ステーション)に接近、そこのソユーズに乗り込んで地球への帰還を図る。
 しかし、やっとISSに取りついたと思ったのも束の間、地球上の軌道を一周回したスペース・デブリにまたも襲われる。
 果たして、ふたりは地球へ帰れるのか。

 舞台は最初から最後までほとんど宇宙空間。
 全編出ずっぱりで生命の危機に瀕したエンジニアに扮しているブロックは、終始無重力状態をも演じながら♂焔Zを続けている。

 それがまったく自然に、何の無理もなく、当たり前に見えるところがすごい。
 宇宙を舞台にした数多の映画が、これだけCGやVFX技術が進んでいるにもかかわらず、無重力だけはあえて無視してきた中で、恐らく映画史上初の挑戦だったのではないだろうか。

 一度は生還を諦めたブロックが、ソユーズの中で目を潤ませる場面が素晴らしい。
 彼女のこぼした涙が丸い粒となり、ふわふわと漂いながら、3D用メガネをかけたぼくたちの眼前に迫ってくる。
 一瞬、手で触れることができるのではないかと勘違いしそうになるほどに。

 これは3D映画史上最高の名場面である。
 同時に、ブロックという女優の演技力と、アカデミー賞を受賞したスタッフの技術力との見事なまでの融合によって表現された、映画という芸術のひとつの到達点と言ってもいい。

 この感動はテレビでは味わえない。
 未見の方はオスカー効果で上映期間が延びたいまのうちに見ておくことをお勧めします。

 採点は90点。

(2013年 アメリカ=ワーナー・ブラザース 91分)

 品川プリンスシネマ、新宿ピカデリーなどで公開期間延長中

 ※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

 2014劇場公開映画鑑賞リスト
2『ラヴレース』(2013年/米)70点
1『ラッシュ/友情とプライド』(2013年/米)85点