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『マネーボール』
2011年11月13日(日)
Moneyball

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 公開されて最初の日曜日、丸の内ピカデリーへ13時30分の回を見に行った。
 客席はほぼ満員。見終わってロビーに出ると16時からの回を待ちかねていた客でごった返していたから、興行的には上々の出足でしょう。
 そりゃ信頼と安心のブランド、幅広い年齢層に人気のある大スター、ブラピがアンジェリーナ・ジョリーと6人の子供を連れて来日、あれだけ宣伝に努めたんだから。
 といえばそれまでですが、ほら、最近、巨人の内紛で話題のGMを題材にした映画でもある。
 映画を見に来たお客さんが、少しでも現実の野球に興味を持ってくれたら、と思わないではいられない。日本のプロ野球でもメジャーリーグでもどちらでもいいから。
 しかし、この作品、いわゆる野球映画ではありません。
 ケビン・コスナーが制作した『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』(1999年)のような3部作の世界を期待するとアテが外れる。
 野球の試合や選手の映像は山盛りなのに、「野球とは何か」を映した場面はほとんど見られない。
 というより、制作者が野球を知らないのではないか、そうでなければ、わざとシラケるようにつくっているのではないか、と思えるようなところが多々目につく。
 例えば、アスレチックスがア・リーグ新記録の20連勝がかかっていた試合、中盤までに大量11点をリードしながらロイヤルズに追いつかれ、新記録達成も夢と消えたか、と思われた矢先、スコット・ハッテバーグが九回裏に代打サヨナラ決勝ホームランを放つ。
 こういう展開なら、スポ根劇画ふうにもっと勝負の緊迫感を盛り上げて然るべきでしょう。『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』のクライマックスがそうだったように。
 ロイヤルズの投手がどれだけの力を持つ投手なのか、11点差から同点に追いついた相手のベンチがどれだけ盛り上がっているかを見せた上で、電光掲示板のスコアやボールカウントをクローズアップで映し、相手投手とハッテバーグの勝負をじっくりと描いてゆく、というのがこういう場合の定石です。
 ところが、この映画はそういう昔ながらの手法をあっさり放棄している。詳しくは書かないけれど、おかげでグッと拳を握ったこちらもガクッとなっちゃう。
 しかし、セイバーメトリクスの野球とはこういう野球なのかもしれないと、妙に納得させられるのもまた確かなのですよ。
 ビル・ジェームズの確率論によって組み立てられたセイバーメトリクスは、野球が運や偶然に支配され、だからこそこのスポーツはドラマチックなのだという、過去の思い込みや固定観念を突き崩した。
 この映画の主人公、アスレチックスGMのビリー・ビーンは、そのセイバーメトリクスを現実の野球界に持ち込み、根づかせることに成功したパイオニアです。
 ビーンは高校時代に5拍子そろったスター選手として注目され、奨学金をくれたスタンフォード大学を中退、ドラフト1位指名を受けたメッツに入団。
 ところが、一向に芽が出ず、いくつかの球団を渡り歩いた末、最後に辿り着いたアスレチックスで30歳を前に引退、スカウトに転身した。
 一度は夢破れた男だからこそ、夢見てセイバーメトリクスに飛びついたわけではない。
 夢ではなく現実として、勝つためには何をすべきか、考えに考え、突き詰めていった結果、確率論によるチームづくりをするしかなかった。
 そういうビーンの生き様と存在感を、この映画は非常にリアルに描いている。人間ドラマとしての面白さは原作より上かもしれない。
 しかし、セイバーメトリクスが何故革新的だったのか、映像として見せられるだけではよくわかりませんね。映画を見る前から疑問に思ってはいましたが、やっぱりなあ、という感じ。
 これから鑑賞するなら、ウィキペディアでセイバーメトリクスの基本的知識を予習しておいたほうがいいでしょう。
 以上、映画の出来栄えに無視できない一長一短があるので採点は75点。
 ちなみに、プロデュースと主演を兼務したブラピはふだん野球を見ることはほとんどなく、監督のベネット・ミラーに至ってはまったく関心がなかったそうです。
 役者ではアート・ハウ監督に扮したフィリップ・シーモア・ホフマンがやっぱりうまい。プライドが高く、昔気質で頑固な半面、カネにもうるさいメジャーリーグの監督像をきちんと表現している。
 でも、本物のハウはこの映画を見て怒らなかったのかな。
 なお、原作の内容と感想はコチラを御一読ください。

(2011年 アメリカ=コロンビア 133分)

 丸の内ピカデリーほかで11月11日からロードショー公開中

 ※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

 2011劇場公開映画鑑賞リスト
28『ウィンターズ・ボーン』(米)85点
27『大脱走』(米)90点
26『ブリッツ』(英)70点
25『ゴーストライター』(仏・独・英)70点
24『ハウスメイド』(韓)65点
23『ピラニア3D』(米)75点
22『大鹿村騒動記』(東映)85点
21『チェルノブイリ・ハート』(米・ウクライナ)90点
20『ツリー・オブ・ライフ』(米)70点
19『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(米=コロンビア)65点
18『リミットレス』(米)70点
17『127時間』(米)80点
16『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(スポッテッドプロダクションズほか)80点
15『八日目の蝉』(松竹)85点
14『ザ・ファイター』(米)80点
13『トゥルー・グリット』(米=パラマウント)85点
12『冷たい熱帯魚』(NIKKATSU)90点
11『悪魔を見た』(韓)75点

10『アパートの鍵貸します』(米)80点
9『英国王のスピーチ』(英/豪)80点
8『ソーシャル・ネットワーク』(米=コロンビア)85点
7『DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』(東宝)70点
6『台北の朝、僕は恋をする』(台/米)75点
5『さくら、さくら-サムライ化学者 高峰譲吉の生涯-』(アステア)60点
4『ウォール・ストリート』(米=FOX)80点
3『洋菓子店コアンドル』(アスミック・エース)85点
2『白夜行』(ギャガ)70点
1『アンストッパブル』(米=FOX)70点


※紺=新作(日本初公開の旧作を含む)
※茶=旧作