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『寄生獣』(コミックス新装版全10巻)岩明均
2016年09月5日(月)


 実写映画版を見たら原作漫画を改めて通読したくなり、amazonで全10巻を大人買い≠オた。
 購入したのは実写版映画の公開に合わせて2014年に復刻された新装版で、10巻すべてに映画の宣伝用スチール(染谷将太、深津絵里、ミギーなど)をデザインした帯が付いている。

 前項で書いたように、主人公・新一の母親が犠牲になるのは漫画の終盤だと思っていたのだが、これはぼくの記憶違いで、母親は映画と同様、割りと早い段階で死んでしまう。
 これが新一のトラウマとなり、母親の思い出のフラッシュバックが最終回まで続くので、てっきり最後のほうで殺されたものと思い込んでいたらしい。

 つまり、新一の抱えたトラウマは、読者であるぼく自身にとっても、結構大きなトラウマとなっていたのである。
 それぐらい、新一の母親が寄生生物に殺され、身体を乗っ取られた姿となって新一の目の前に現れる場面は衝撃的だった。

 アメリカのゾンビ映画にはよく家族がゾンビとなって自分の夫や妻、親や子供に襲いかかる悪趣味な場面が出てくるが、本作における母親の死と化け物への変貌は、とてもあんな見世物ホラー映画の比ではない。
 もし自分の母親が同じような目に遭ったら、おれなら間違いなく気が狂ってしまうだろう。

 そう思わせるのは、岩明均の画風に負うところが大きい。
 素朴でゴツゴツした線、温かでユーモラスなタッチで新一の家族、里美や加奈との恋模様を描き、加奈に横恋慕している光夫と新一が喧嘩になる場面など、まるでぼくが子供のころに読んでいた青春漫画のようだ。

 そこに、寄生生物による残虐な殺しの場面が挟まる。
 この落差が本作の最大の魅力であり、ほかの漫画家には真似のできない最大の特徴だろう。

 なお、タイトルの「寄生獣」は寄生生物のことではなく、逆に寄生生物のほうから人間に向かって発せられた言葉だった。
 寄生生物の襲来を恐れ、彼らを殲滅しようとする人間こそが地球の「寄生獣」で、寄生生物は実は人間の仲間であり、われわれは「二つで一つ」なのだと寄生生物(田宮良子=玲子)は言う。

 原作漫画も実写映画版も両方楽しめる稀有な作品。
 どちらも見てない、読んでない、という方はいまからでもぜひどうぞ。

(発行:講談社 アフタヌーンKCDX 各巻第1刷:2014年8月8日 定価:463円=税別)