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『シン・ゴジラ』(IMAX)
2016年08月1日(月)


 第1作の『ゴジラ』(1954年)は学生時代に池袋の旧文芸座で鑑賞、そのときの感動が忘れられず、2001年に初めてDVD化されるとすぐに購入している(定価6000円!)。
 それほど思い入れが強かったせいか、リブート第1作の橋本幸治監督版『ゴジラ』(1984年)、ローランド・エメリッヒのアメリカ版第1作『GDZILLA』(1998年)は駄作にしか見えず、一昨年のアメリカ版第2作『GODZILLA ゴジラ』(2014年)も怪獣映画としてはよくできていたけれど、外国人によるゴジラ像への違和感が先に立ち、心置きなく楽しめるほどの出来栄えには達していなかった。

 しかし、そのアメリカ製ゴジラ≠ェ意外にも世界的に大ヒットし、それならばと東宝が庵野秀明に総監督としてリメイクを依頼したのが本作のスタートだったという。
 ぼくは庵野がブレークした『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)をまったく見ていなくて、大して期待もせずに劇場へ足を運んだのだが、豈図らんや、これが実に面白かった!

 本作が成功した最大の要因は、実際に東京にゴジラが上陸したら政府や自衛隊はどのような対応をするのか、徹底的なリサーチを行い、その調査結果に基づいた一種のポリティカル・フィクション≠ノしたことだろう。
 開巻、東京湾で海底火山によく似た水蒸気の噴出が起こり、アクアラインのトンネル天井に亀裂が走って大量の浸水が発生、政府内でただちに関係閣僚による対策会議が召集される。

 この種の映画の常として、主人公の矢口官房副長官(長谷川博己)だけは怪獣の存在に気がついているのに、上司の東官房長官(柄本明)、先輩の赤坂首相補佐官(竹野内豊)らは「そんなマンガみたいなこと、現実にあるわけないだろう」と取り合おうとしない。
 怪獣映画のツボをよく心得た導入部で、そうこうするうちに出現した「巨大不明生物」が蒲田に上陸、ビルや住宅を破壊し、住民を踏み潰しながら品川へ向かう。

 その巨大不明生物がメタモルフォーゼを起こし、徐々にゴジラへと変貌していく中、被害が拡大してゆく事態の推移に合わせて、政府と自衛隊の対策会議の模様が事細かに描かれる。
 登場人物はほとんど例外なく早口で、うっかりすると聞き逃しそうな専門用語を連発、しかも人物(名前、役職、肩書)、場所(会議室、対策本部、基地内部)、兵器(戦闘機やヘリコプター)などのテロップが頻出するので目がついていかない。

 非常に展開が慌ただしく、この流れに乗っていけない観客もいるだろうが、この種の災害時に政府の対応が慌ただしくなるのはむしろ当然であり、次第に身につまされるようなリアリティを感じるようになる。
 これは要するに、「東日本大震災」や「熊本地震」を、東京における「ゴジラ」に置き換えたシミュレーションなのだ。

 そして、何と言っても、日本映画初のCGによってつくられたゴジラの造形が素晴らしい。
 ゴジラのイメージデザインを担当した前田真宏はぼくと同い年で、原案を考えた庵野はぼくより3歳年上、監督・特技監督の樋口真嗣は2歳年下と、同世代の彼らがゴジラのどういう部分が恐怖を感じさせ、どんなところが日本人を惹きつけてやまないのか、きちんと心得ていることがよくわかる。

 このゴジラが東京駅周辺で日米連合軍と最後の決戦に臨むクライマックスは久々に身震いするほどの迫力だった。
 これから鑑賞する方はぜひ、IMAXの大画面でこの新しいゴジラの暴れっぷりを堪能していただきたい。

 もうひとつ、オープニングとエンディングのほか、ゴジラと日米空軍の対決シーンなど、要所要所で伊福部昭の音楽を実に効果的に使っていることも強調しておきたい。
 見ているうちに鳥肌が立ち、ゴジラと伊福部音楽が分かち難く結びついていることを改めて痛感した。

 あえて弱点を挙げるとすれば、米国大統領特使という役割で登場する石原さとみのパートが、作品全体の雰囲気に調和しておらず、完璧に浮いてしまっていること。
 こういうヒロインは極力脇に押しやり、もっとハードなドキュメンタリー・タッチに徹していれば完璧な傑作になっていたのに、惜しい。
 
 採点は90点です。

(2016年 東宝 120分)



TOHOシネマズ新宿、新宿ピカデリーなどで公開中

※50点=落胆 60点=退屈 70点=納得 80点=満足 90点=興奮(お勧めポイント+5点)

 2016劇場公開映画鑑賞リスト
9『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015年/米)90点
8『インデペンデンス・デイ リサージェンス』(2016年/米)70点
7『疑惑のチャンピオン』(2015年/英、仏)70点
6『ダーク・プレイス』(2015年/英、仏、米)70点
5『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)80点
4『マネーモンスター』(2016年/米)75点
3『FAKE』(2016年/東風)80点
2『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年/米)80点
1『白鯨との闘い』(2015年/米)80点