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『アリスのままで』(WOWOW)
2016年06月25日(土)
Still Alice


 ジュリアン・ムーアが若年性アルツハイマー病にかかった女性を演じて昨年のアカデミー主演女優賞を受賞した作品。
 リサ・ジェノヴァという作家による原作小説は全世界で1800万部を売り上げたベストセラーで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に侵されていた監督リチャード・グラツァーのたっての希望で映画化されたという。

 映画はムーア扮するハーバード大学の言語学教授アリス・ハウランドが、50歳の誕生日を家族に祝福されている和やかなシーンから始まる。
 夫ジョン(アレック・ボールドウィン)は医学界で知られた医者、一男二女の子宝にも恵まれ、結婚している長女は不妊治療が奏功して妊娠し、初孫の顔を見るのを楽しみにしていた。

 アルツハイマーの症状は最初は小さく、徐々に、やがてアリス自身にもはっきりとわかるほど明らかになってくる。
 最初は大学での講演の最中に「語彙」という簡単だが重要な言葉を忘れ、次はいつものジョギングの最中にキャンパスで迷子になり、明らかにおかしいと感じたアリスは自ら神経科の診察を受ける。

 そして、MRI検査の結果、若年性アルツハイマー病であることがわかった。
 さらに、遺伝子検査を受けたところ、これが家族性の病気であり、子供や孫にまで遺伝する可能性があると告げられる。

 ここまでならいかにも難病モノ≠ノありがちな展開だが、アリスは夫のジョンと話し合い、子供たちに自分の病気を打ち明け、いずれは何もわからなくなってしまう、その前に将来に備えるため、アルツの遺伝子を受け継いでいるかどうか検査を受けてほしい、と頼む。
 検査の結果、長男トム(ハンター・パリッシュ)は陰性、長女アリス(ケイト・ボスワース)は陽性と判明、次女リディア(クリステン・スチュワート)は検査を受けようとしない。
 
 アルツが発症する確率は100%で、治癒することも症状の進行を止めることも不可能。
 夫には自分の仕事があり、有利な条件でミネソタの病院にスカウトされ、生活を支えなければならない経済的な事情からも、自宅のあるボストンから引っ越さざるを得なくなった。

 そうした中で、アリスは認知症患者の集いに出席し、いまできることは何か、これからどう生きていけばいいのか、自分が考えていることを懸命にスピーチする。
 反対していた次女の演劇活動にも理解を示し、彼女の舞台を見に行って惜しみない拍手を送る(チェーホフの『三人姉妹』で、リディアはイリーナを演じている)。

 しかし、その一方、いざという場合に備えて、自分で自分に語りかける動画をMacのフォルダに保存しておく。
 この自分の動画を見たら、「全部飲む」というポストイットを貼った薬壜を開け、その中の錠剤をすべて飲むように、と。

 グラツァーの演出は常に静謐で、ムーアも終始淡々と演じており、上映時間も101分と今時の映画としては短いほうだ。
 それにもかかわらず、いよいよアルツの症状が深刻化した終盤、アリスがMacを開けてかつての自分と相対したとき、認知症によってここまで衰えてしまったのかと、その表情の違いに愕然とさせられる。

 リメイク版『キャリー』(2013年)、『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2014年)と、このところ汚れ役を体当たりで演じてきたムーアの白眉。
 そのムーアと喧嘩しながら母親への愛情に目覚めてゆく次女リディア役のスチュワートも『ランナウェイズ』(2010年)のジョーン・ジェット役以来の好演。

 監督のグラツァーは本作の公開3カ月後にALSの合併症で亡くなっている。
 見ている最中に涙を搾り取るようなタイプの映画ではなく、見終わったあとで様々な場面が脳裏に蘇る佳作。

 お勧め度はA。

(2014年 アメリカ=ソニー・ピクチャーズ・クラシックス/日本配給2015年 キノフィルムズ 101分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2016リスト
 ※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

61『ジャコ萬と鉄』(1964年/東映)B
60『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)A
59『人間蒸発』(1967年/日活、日本ATG他)B
58『予告犯』(2015年/東宝)C
57『ダーティ・セブン』(1972年/伊、仏、西独、西)D
56『ジョニー・オクロック』(1947年/米)C※未ビデオ化
55『東京オリンピック』(1965年/東宝)B
54『上意討ち 拝領妻始末』(1967年/三船プロ、東宝)A
53『大魔神逆襲』(1966年/大映)B
52『大魔神怒る』(1966年/大映)A
51『大魔神』(1966年/大映)A
50『龍三と七人の子分たち』(2015年/ワーナー・ブラザース、オフィス北野)C
49『小さいおうち』(2014年/松竹)A
48『ミレニアム3 眠れる美女と狂卓の騎士』(2009年/瑞典、丹麥、独)B
47『ミレニアム2 火と戯れる女』(2009年/瑞典、丹麥、独)B
46『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009年/瑞典、丹麥、独)B
45『シンドバッド黄金の航海』(1973年/米)B
44『シンドバッド7回目の冒険』(1958年/米)B
43『水爆と深海の怪物』(1955年/米)C
42『スプラッシュ』(1984年/米)B
41『女と男の名誉』(1985年/米)A
40『バートン・フィンク』(1991年/米)A
39『フューリー』(2014年/米)C
38『バベル』(2006年/米)A
37『インヒアレント・ヴァイス』(2014年/米)C
36『シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎』(2016年/NHK)B
35『映画 ビリギャル』(2015年/東宝)A
34『終の信託』(2012年/東宝)C
33『ALI アリ』(2001年/米)C
32『キング オブ ポルノ』(2000年/米)B
31『グリーンドア』(1972年/米)B
30『ラビッド』(1977年/加)B
29『ビデオドローム』(1983年/加)B
28『三十九夜』(1935年/英)A
27『第3逃亡者』(1937年/英)B
26『サボタージュ』(1936年/英)B
25『吸血鬼ドラキュラ』(1958年/英)B
24『オオカミは嘘をつく』(2013年/以)C
23『メイズ・ランナー』(2014年/アメリカ)C
22『帝都物語』(1988年/東宝)C
21『座頭市地獄旅』(1965年/大映)B
20『鬼龍院花子の生涯』(1982年/日本ヘラルド)A
19『瀬戸内少年野球団』(1984年/日本ヘラルド)C
18『ダイナマイトどんどん』(1978年/大映、東映)C
17『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝、フジテレビ)A
16『ティン・カップ』(1996年/米)C
15『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994年/米)A
14『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2014年/加、米、独、仏)B
13『博士と彼女のセオリー』(2014年/英)A
12『チャッピー』(2015年/米)A
11『荒野はつらいよ〜アリゾナより愛をこめて〜』(2014年/米)C
10『サンダーボルト』(1974年/米)B
9『白い肌の異常な夜』(1971年/米)B
8『刑事コロンボ 第45話「策謀の結末」』(1978年/米)C
7『はぶらし/女友だち』(2016年/NHK)A※未ビデオ化
6『暁の7人』(1975年/米)A
5『ジョニーは戦場へ行った』(1971年/米)B
4『NHKスペシャル 映像の世紀』(1995年/NHK)A
3『刑事コロンボ 第44話「攻撃命令」』(1978年/米)B
2『刑事コロンボ 第43話「秒読みの殺人」』(1978年/米)C
1『ラヴ・ストリームス』(1984年/米)A