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『ラビッド』(セルDVD)
2016年04月25日(月)
Rabid


 デヴィッド・クローネンバーグ2本目の監督作品。
 以前から見たかったのだが、中古DVDには1万円以上の高値が付いていて手が出ず、最近になってようやく廉価版(それでも1800円だけどね)が出たので、早速Amazonで購入した。

 恋人ハート(フランク・ムーア)の運転するバイクの後ろに乗っていたローズ(マリリン・チェンバース)が事故に遭い、重傷を負ってダン・ケロイド博士(ハワード・リシュパン)の病院に搬送される。
 ここで博士の開発した皮膚移植手術を受けたローズは、副作用によって人間の血を吸わなければ生きていけない吸血鬼≠ノ変貌。

 その血の吸い方が独特である。
 腋の下に肛門のような穴ができて、そこから出てくるペニス状の突起を人間の身体に突き刺し、注射器のように血液を吸い取るのだ。

 ローズに血を吸われた人間もまた正体不明のウイルスに感染、口から泡を吹いて狂犬病のような症状を呈し、ゾンビ≠ニ化して別の人間に噛みつき始める。
 ケロイド博士や看護士まで毒牙にかけたローズは、病院を抜け出してモントリオールへ行き、街中で獲物≠漁りながら感染者を増やしてゆく。

 これが社会問題化してついには全市に戒厳令が敷かれ、警察や軍隊が感染者を射殺して回るようになる。
 という展開は、のちのゾンビ映画で何度も繰り返されたパターンで、本作が元ネタのひとつになったのかもしれない。

 クローネンバーグは本作の前の監督第1作『シーバース/人喰い生物の島』(1975年)で、肛門から侵入して人間を操る寄生生物を創造した。
 カルト作品化した『ビデオドローム』(1983年)では主役ジェームズ・ウッズの腹に女性器をつくり、後年の『クラッシュ』(1996年)では自動車事故によってしか性的エクスタシーを得られなくなった男女の姿を描いている。

 要するに、筋金入りの変態≠ネのだ。
 実際、クローネンバーグ自身も「私にとって映画とはセックスを意味するんだ。ほかの何にも増して、映画とは性的なファンタジーだ。肉感的でエロティックな快楽の夢だ」と発言。

 大学卒業後は生活のためもあり、カナダで1社しかないポルノ映画専門の会社にシナリオを売り込んだほどだったという。
 (※出典:『〈映画の見方〉がわかる本 80年代アメリカ映画 カルト・ムービー篇/ブレードランナーの未来世紀』町山智浩著、洋泉社刊)。

 また、本作の主演女優マリリン・チェンバースは当時、ハードコア・ポルノのナンバーワン女優だった。
 ただし、一口にポルノ女優と言っても、昔の日活ロマンポルノの宮下順子や高倉美貴、最近の壇蜜や杉本彩が一般映画に出演している邦画界のケースとはだいぶ意味合いが異なる。

 1970年代に隆盛を極めたアメリカン・ハードコアは、最近の日本で言えば、無修正動画サイトのアダルトビデオで行われている本番行為を映画館のスクリーンで見せていたような代物である。
 チェンバースは、そういう作品の中で最初に商業的かつ国際的成功を収めた『グリーンドア』(1972年)に主演、ハードコアというジャンルを確立させた史上初の女優と言ってもいい。

 この『ラビッド』に出演したのはハードコア作品を3〜4本撮ったあとで、同時期に歌手としてレコードも出しており、一般映画への転身を考えていた時期だったらしい。
 だからか、なかなかの熱演で、上手いとは言い難いが、独特の雰囲気と存在感を漂わせている。

 とりわけ、モントリオールのダウンタウンでローズが獲物≠物色するシーンが非常に秀逸。
 ひとりでポルノ映画館に入り、言い寄ってきた男の観客から血を吸い終わって通りに出ると、隣の一般映画の劇場の入口に『キャリー』(1976年、アメリカ、ブライアン・デ・パルマ監督)のポスターが貼ってある、というくだりが面白い。

 クローネンバーグは当初、『キャリー』に主演したシシー・スペイセクをキャスティングしようと考えていたところ、製作会社がチェンバースを推薦。
 そうした裏事情を踏まえて、クローネンバーグが楽屋落ちのワンカットを挿入したらしい。

 クライマックスでは、恋人ハートと再会したローズが、感染源≠ナある自分を自分で処分≠オようと決心。
 幕切れにはいかにもクローネンバーグらしい寒々しさと独特の余韻が漂って、彼のフィルモグラフィーの中でも出色の名場面になっている。

 チェンバースは結局、一般映画への移行が叶わず、生涯ポルノに関わり続け、2006年に56歳の若さで亡くなっている。
 そういう事実を知った上で、いまこのラストシーンを見ると、その後のチェンバース自身の人生を象徴しているようにも感じられるのだ。

 米本国より4年遅れの1976年に公開された日本では、ポルノ専門の松竹ジョイパックフィルムが配給し、現在とはまったく違うセールス方法で宣伝されている。
 上のDVDパッケージ、下の劇場公開当時のポスターを比べると一目瞭然だろう。

 お勧め度はB。
 


(1977年 カナダ/日本公開1978年 91分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2016リスト
 ※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

29『ビデオドローム』(1983年/加)B
28『三十九夜』(1935年/英)A
27『第3逃亡者』(1937年/英)B
26『サボタージュ』(1936年/英)B
25『吸血鬼ドラキュラ』(1958年/英)B
24『オオカミは嘘をつく』(2013年/以)C
23『メイズ・ランナー』(2014年/アメリカ)C
22『帝都物語』(1988年/東宝)C
21『座頭市地獄旅』(1965年/大映)B
20『鬼龍院花子の生涯』(1982年/日本ヘラルド)A
19『瀬戸内少年野球団』(1984年/日本ヘラルド)C
18『ダイナマイトどんどん』(1978年/大映、東映)C
17『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝、フジテレビ)A
16『ティン・カップ』(1996年/米)C
15『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994年/米)A
14『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2014年/加、米、独、仏)B
13『博士と彼女のセオリー』(2014年/英)A
12『チャッピー』(2015年/米)A
11『荒野はつらいよ〜アリゾナより愛をこめて〜』(2014年/米)C
10『サンダーボルト』(1974年/米)B
9『白い肌の異常な夜』(1971年/米)B
8『刑事コロンボ 第45話「策謀の結末」』(1978年/米)C
7『はぶらし/女友だち』(2016年/NHK)A※未ビデオ化
6『暁の7人』(1975年/米)A
5『ジョニーは戦場へ行った』(1971年/米)B
4『NHKスペシャル 映像の世紀』(1995年/NHK)A
3『刑事コロンボ 第44話「攻撃命令」』(1978年/米)B
2『刑事コロンボ 第43話「秒読みの殺人」』(1978年/米)C
1『ラヴ・ストリームス』(1984年/米)A